【ネタバレあり|夢の果てにEND】初代ホロウナイトのストーリーを小説仕立てで書きました 小説版:Hollow Knight

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©Team Cherry

目次

虚無と夢、忘れられた王国の変遷

序章:風が囁く地と虚ろな騎士

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風が、忘れられた土地の匂いを運んでくる。それは乾いた土埃と、遠い昔に流れたであろう無数の涙、そして生命が朽ち果てた微かな腐臭が混じり合った、もの悲しい香りだ。

ハロウネスト。

地の底深くに広がる、かつて栄華を極めた虫たちの王国。その名は、地表の住人たちの間ではおとぎ話か、あるいは不吉な伝説として、かろうじて囁かれる程度に過ぎない。

かつて、この王国はペイル・キングと呼ばれる、光り輝く知性を持つ王によって統治されていた。彼は虫たちに理性と自我を与え、複雑な社会と壮麗な建築物を築き上げさせた。青白く輝く鉱石が街を照らし、精巧な路面電車が広大な領土を結び、知的な虫たちが学問や芸術に勤しんでいたという。しかし、その輝かしい時代は、まるで儚い夢のように消え去った。今、ハロウネストを覆っているのは、沈黙と荒廃、そして「感染」と呼ばれる奇妙で恐ろしい病だ。

この忘れられた王国の淵、風吹きすさぶ崖の上に、ぽつんと存在する寂れた村、ダートマウス。その古井戸の縁に、小さな影がひとつ、静かに佇んでいた。外套をまとい、顔には白い仮面。その仮面には表情がなく、大きな黒い瞳は深淵を覗き込んでいるかのようだ。手には剣・・・いや、古びた釘を携えている。彼は多くを語らない。いや、語るべき言葉を持たないのかもしれない。この物語の主人公、「騎士」と呼ばれる存在である。

騎士はどこから来たのか、何者なのか。その仮面の下にあるのは、確固たる意志か、それともただの虚無か。彼、あるいはそれは、ハロウネストの深部から響く、微かな呼び声に引かれるようにしてこの地にたどり着いた。それは失われた故郷への回帰なのか、あるいは果たすべき宿命への導きなのか。騎士自身にも、それはわからなかった。

ただ、下へ、深くへと進まなければならないという、抗いがたい衝動だけがあった。

ダートマウス

ダートマウスは、ハロウネストの入口であり、終着点でもあるかのような場所だ。ほとんどの建物は打ち捨てられ、住人の姿もまばら。その中で、騎士は一人のムシと出会う。

エルダーバグ(老いたムシ)である。

彼はこの村の最後の生き証人のように、ベンチに腰掛け、過ぎ去った日々の記憶と共に静かに時を過ごしていた。

「おやおや、旅の方かね?こんな寂れた場所にようこそ」

エルダーバグは、久しぶりの来訪者に少し驚きながらも、穏やかに語りかける。彼の言葉の端々には、諦観と、王国への深い愛着、そして拭いがたい悲しみが滲んでいた。

「この下には、かつて偉大な王国があったんじゃよ。ハロウネスト…ああ、美しい響きじゃ。じゃが、それも今は昔。病が…『感染』がすべてを奪っていった」

彼は語る。感染は、虫たちの心をオレンジ色の光で満たし、理性を奪い、本能的な怒りと暴力性だけを残す呪いだと。感染した虫たちは、かつての仲間や家族でさえ見境なく襲い掛かり、自我を失った抜け殻となって王国を徘徊している。その感染は、王国の最も深い場所から湧き出ているらしい。

「わしにできるのは、せいぜい忠告くらいじゃ。『下へ行け』。ただし、決して希望を持つでないぞ。多くの者が下へ降りて行ったが、戻ってきた者はほとんどおらんのじゃからな…」

エルダーバグの言葉は重い。

しかし、騎士の虚ろな瞳には、恐れも迷いも見えなかった。彼はただ、エルダーバグに静かに一瞥をくれると、村の中心にある古井戸へと向かう。そこは、ハロウネストの深淵へと続く唯一の入口だった。騎士は躊躇なく、その暗闇へと身を投じた。

長く、険しく、そして悲劇に満ちた旅が、いま始まる。

第一章:交差する運命

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忘れられた交叉路

井戸の底から騎士が降り立ったのは、「忘れられた交叉路」。

かつてはハロウネストの物流と交通の中心であり、多くの虫たちが行き交ったであろう活気ある場所。しかし、今ではその面影はなく、崩れた通路、錆びついた標識、そして感染によって凶暴化したかつての住民たちが、虚ろな唸り声を上げて徘徊している。空気は淀み、不気味なオレンジ色の光が、壁の亀裂や虫たちの目から漏れ出ている。

騎士は、その小さな体に似合わぬ決意を秘め、釘を構えて進む。

「ジオ」は、この世界の通貨であり、様々な物品を購入するために必要となる。そして、敵から吸収する青白いエネルギー「ソウル」は、傷ついた体を癒す力となり、また強力な呪文を放つための源泉ともなる。騎士は本能的に、この世界の理を理解し、生き抜く術を身につけていく。彼は空っぽの器のはずだが、生存への意志、あるいはプログラムされた目的遂行能力が、彼を突き動かしていた。

交叉路の迷宮のような通路を進むうち、騎士は陽気なハミングと、地図の切れ端が散らばっているのを発見する。音のする方へ進むと、大きな紙束を抱え、一心不乱にペンを走らせている風変わりな虫がいた。地図製作者、コーニファーである。

「こんなところで会うなんて。私はコーニファー。この素晴らしい、だけどちょっと危険なハロウネストの地図を作っているんだ。」

彼は底抜けに明るく、この危険な環境を楽しんでいるかのようだ。彼の存在は、荒廃した王国における一筋の光明のように感じられる。

「よかったら、私が描いたこの辺りの地図を買わないか?ちょっとしたお代はもらうけど、きっと君の冒険の役に立つはずだ。」

事実、コーニファーから地図を購入することで、騎士の探索は格段に容易になる。彼はハロウネストの隅々まで踏破し、地図を描くことを生涯の目標としていた。

ダートマウスに戻ると、彼の妻であるイゼルダが店を開いており、コーニファーが描き上げた完成版の地図や、コンパス、ピンといった探索を助ける道具を販売していた。イゼルダは夫の無謀な冒険に呆れながらも、どこか誇らしげだった。彼ら夫婦の存在は、滅びゆく世界の中にも確かな生活と愛情が存在することを示していた。

交叉路の奥深く、古代の建造物の残骸が転がる広間で、騎士は運命的な出会いを果たす。素早い動きで現れたのは、赤い外套を身に纏い、鋭い針・・・縫い針を武器としたようなそれを構えた戦士。彼女は騎士の行く手を阻むように立ち塞がる。

「待ちなさい。お前は何者?その仮面…お前のような『器』が、なぜ今更この地に現れたの?」

自らを「ホーネット」と名乗る彼女の言葉には、騎士の正体を知っているかのような響きと、強い警戒心が込められていた。

ホーネットは、この王国の守護者を自任しており、ハロウネストの深部に眠る秘密を、軽々しく暴こうとする者を許さない。彼女の出自は謎に包まれているが、その佇まいや言葉遣いには、王族のような気品と、暗闇の巣の獣のような獰猛さが同居していた。彼女もまた、この王国の悲劇と深く関わる存在なのだ。

「お前の力を試させてもらうわ。この先に進む覚悟があるのかどうか!」

ホーネットは、瞬く間に騎士に襲い掛かる。その動きは疾風の如く、針による突きは正確無比。時には糸を操り、空中を舞い、騎士を翻弄する。騎士は、これまでに培った戦闘技術を駆使し、必死に応戦する。釘と針が火花を散らし、赤い外套と白い仮面が交錯する。激しい攻防の末、騎士は辛くもホーネットを退けることに成功する。

「…少しはやるようね。でも、この程度でハロウネストの闇に立ち向かえるとは思わないことよ」

ホーネットは忌々しげに言い放つと、再び糸を使って瞬時に姿を消した。彼女は騎士の潜在能力を認めつつも、その先に待ち受けるであろう絶望的な現実を知っているかのようだった。彼女の存在は、騎士にとっての試練であり、同時に道標ともなっていく。

緑の道

忘れられた交叉路を抜け、騎士が次に足を踏み入れたのは「緑の道」。

そこは湿気に満ち、苔と蔦、巨大な葉が鬱蒼と生い茂る、生命力に溢れた場所だった。天井からは絶えず水滴が滴り落ち、柔らかな緑の光が辺りを満たしている。しかし、この美しい風景にも、感染の魔の手は確実に忍び寄っていた。獰猛な「苔の騎士」が巡回し、酸の池が危険な罠となり、植物に擬態した捕食者が潜んでいる。

この緑の道の奥深く、湖のほとりで騎士は再びホーネットと対峙する。彼女はこの聖域のような場所を守っており、騎士がこれ以上王国の秘密に近づくことを良しとしなかった。

「まだ諦めていなかったのね。忠告はしたはずよ。お前のような虚ろな存在に、この王国の悲劇を終わらせる力も資格もない!」

最初の戦いよりも、ホーネットの決意は固く、攻撃はさらに鋭さと苛烈さを増していた。糸を使った攻撃や素早いダッシュからの突き、空中からの奇襲。騎士は、道中で見つけたチャームの力やソウルの呪文を駆使して対抗し、持てる力のすべてをぶつけ、再びホーネットを打ち破る。

膝をついたホーネットは、悔しさと共に、騎士の内に秘められた尋常ならざる力、あるいは、その完全なる「虚無」の性質を認めざるを得なかった。彼女は諦めたように、そしてどこか悲しげに、ハロウネストを蝕む感染の真実と、それを封じ込めている存在について語り始める。

「王国の心臓部、『黒卵の神殿』…。そこに、感染の源を封じ込めた『器』がいるわ。」

「封印を維持しているのは、三人の『夢見の者』。彼らは自ら永遠の眠りについて、神殿の扉を護っている。…もし、お前が本当にこの悪夢を終わらせるつもりなら、彼らを探し出し、その封印を解くしかない」

ホーネットは騎士に、進むべき道。すなわち、三人の夢見の者の討伐を示唆する。

それは、封印を解き、黒卵の神殿への道を開くための、唯一にして過酷な手段だった。彼女は敵であり、監視者であり、そして皮肉にも導き手となった。複雑な感情を瞳に宿らせながら、ホーネットは再び緑の陰へと消えていった。

騎士は、彼女が残した重い言葉を胸に、さらなる深淵へと歩を進める。

第二章:降り注ぐ永遠の雨

胞子の森

ホーネットが示した道を辿る前に、騎士の探索は彼を「胞子の森」へと導く。

そこは巨大なキノコが林立し、胞子が舞う独特の生態系を持つ地域だった。空気は湿り気を帯び、奇妙な菌類生物がうごめいている。この地の住民は、誇り高く、排他的な「カマキリ族」である。彼らはペイル・キングの支配を完全には受け入れず、独自の文化と規律を守り、驚くべきことに感染の影響をほとんど受けていなかった。彼らの強靭な精神力と戦闘技術が、感染の侵入を許さないのだろう。

カマキリの村の最深部には、彼らの指導者である三人の「カマキリの王」が待ち構えていた。

彼らは余所者である騎士の力を試すべく、同時に襲い掛かってくる。その戦いは単なる力押しではなく、三位一体の連携攻撃を見切り、攻撃に合わせて回避と反撃を行う、精密さと集中力が要求される試練だった。槍による素早い突き、回転する刃、空中からの急襲。騎士は彼らの動きを学び、呼吸を合わせるように戦い、ついに勝利を収める。

カマキリの王たちは、騎士の戦士としての資質を認め、敬意を表して道を開ける。そして、彼らの領域の奥にある宝物庫への入庫を許し、騎士は壁を蹴って登る能力を授かる。これにより、新たな場所への道が開かれることになった。

涙の都

新たな力を得た騎士は、かつての中心地、「涙の都」へと足を踏み入れる。

その名の通り、この壮麗な都市には絶えず冷たい雨が降り注いでいる。それは天から降る雨ではなく、都市の上部にある巨大な「青い湖」から染み出した水だという。

ガラスのような輝きを放つ建築物、精巧な装飾が施された街灯、貴族たちのものと思しき邸宅の廃墟。かつての栄華を偲ばせる風景と、崩壊と荒廃が同居する、物悲しくも美しい場所だ。ここにも感染は蔓延しており、かつての都の住民である衛兵や貴族たちが、感傷的な溜息をつきながら、あるいは過去の栄光にしがみつくように、徘徊している。

この感傷的な都で、騎士は一人の旧知と再会する。物静かで思慮深い学者風の虫、クィレルである。彼はハロウネストの歴史と謎に強い興味を抱き、自身の失われた記憶を求めてこの地を放浪していた。

「やあ、また会ったね。この都は…美しいだろう?だが、この雨は決して止むことがない。まるで王国そのものが泣いているようだ」

クィレルは騎士の旅の先々で姿を現し、その博識さでヒントを与えたり、時には共に道を切り開いたりする、頼れる友人…だ。彼は騎士の虚ろな仮面に何かを感じ取っているようだが、深く詮索することはなく、ただ静かにその旅を見守る。彼の存在は、孤独な騎士の旅における数少ない心の支えとなる。

涙の都の一角には、「ソウルの聖域」と呼ばれる施設が存在した。そこは、かつてハロウネストの学者たちが、生命エネルギーである「ソウル」の神秘を探求し、永遠の命や強大な力を得ようとした研究機関だった。

しかし、彼らの探求は倫理の境界を越え、禁忌の実験に手を染めた結果、多くの被験者が歪んだ怪物と化し、研究者自身も狂気に囚われていったことが、残された記録や施設の禍々しい雰囲気からうかがえる。知識への渇望が、破滅を招いたのだ。

聖域の最上階で騎士を待ち受けていたのは、その狂気の研究を主導したと思われる強力な魔術師、「ソウルの師」。彼は自らの体を改造し、ソウルを自在に操る力を得ていた。

瞬間移動を繰り返し、強力なソウルの弾丸や衝撃波を放ち、騎士を翻弄する。その戦いは、ソウルの本質である生命の力と、それがもたらしうる狂気を象徴しているかのようだった。激しい魔術戦の末、騎士はソウルの師を打ち倒す。

その亡骸から、騎士は地面を強く叩きつけて衝撃波を放つ技を習得する。ソウルの聖域での出来事は、知識や力の追求がいかに危険な道であるかを騎士に教えてくれた。そして、涙の都での探索は、騎士をさらに重要な場所へと導く。

安息の地

王国の東端に位置する「安息の地」。

そこはクリスタルが輝き、静謐な空気に満たされた、ハロウネストにおける数少ない安息の場所だった。墓標が立ち並び、かつて存在した者たちの記憶が漂っている。ここで騎士は、古代種族である「蛾族」の最後の生き残り、「先見者」と出会う。

彼女は小柄で、どこか儚げだが、その瞳には深い知恵と、長い年月の記憶が宿っていた。蛾族はかつて夢と光を司る存在であり、ラディアンスを崇拝していたが、ペイル・キングの台頭と共に衰退していった種族だ。

「あなたが来るのを待っていました」

先見者は、騎士の正体と使命を知っているかのように語りかける。彼女は騎士に、古代の武器であり、精神世界に干渉する力を持つ「夢見の釘」を授ける。この奇妙な釘は、敵や特定の物を攻撃することで、彼らの思考の断片を読み取ったり、過去の記憶を垣間見たりすることができるという。さらに、夢見の釘は「エッセンス」と呼ばれる夢のエネルギーを集める力を持つ。

「ハロウネストには、多くのエッセンスが漂っています。過去の記憶、強い思念、夢の残滓…それらを集めなさい。エッセンスが集まれば、夢見の釘は覚醒し、真の力を発揮するでしょう。そして、あなたが進むべき道を照らすはずです」

先見者は、騎士にエッセンス収集の使命を与える。それは単なる力の強化ではなく、ハロウネストの隠された真実に触れるための鍵となる。

そして、先見者は改めて、ホーネットも言及した「夢見の者」たちの存在について語る。監視者ルリエン、教師モノモン、獣者ヘラー。彼らは自らの意思で永遠の眠りにつき、その精神力で黒卵の神殿の封印を維持している偉大な存在たちだ。しかし、感染を根絶するには、彼らの犠牲の上に成り立つ封印を解き、根源たる存在と対峙するしかない。

「彼らを夢見の釘で討ちなさい。それは彼らの精神を解放し、封印を解く唯一の方法。…辛い役目でしょうが、それがハロウネストを救うために、あなたがなさねばならぬことなのです」

先見者の言葉は、騎士に重い選択を突きつける。王国を救うためには、王国を守ってきた者たちを討たねばならないという矛盾。騎士は、その矛盾を抱えたまま、三人の夢見の者が眠る地へと向かう決意を固める。涙の都、霧の渓谷、そして暗闇の巣。それぞれの地に眠る守護者たちを解放するための、新たな旅が始まる。

第三章:夢と眠りの守護者たち

監視者ルリエン

夢見の釘と先見者の導きを得て、騎士の目標は明確になった。黒卵の神殿を護る三人の夢見の者を探し出し、彼らの精神を解放すること。それはハロウネストの運命を左右する、極めて重要な使命だった。

最初の標的は、涙の都に眠る「監視者ルリエン」。彼はかつて都を見守る役目を担っており、その名の通り、都市で最も高い建造物である「監視者の尖塔」の頂で、永遠の眠りについていた。尖塔への道は険しく、かつてルリエンに仕えていたであろう忠実な衛兵たちの抜け殻が、今もなお主の眠りを守らんと侵入者を阻む。

尖塔の最上階、豪華な望遠鏡が置かれた部屋で、ルリエンは玉座のような椅子に座り、静かに眠っていた。しかし、その眠りを守るのは、重厚な鎧に身を包んだ六体の「監視者騎士」たちだった。彼らはペイル・キングによって作られた、あるいは改造された存在であり、個々の戦闘能力もさることながら、その連携攻撃は驚異的だった。

一体を攻撃していると別の騎士が死角から襲い掛かり、回転しながら突進してきたり、跳躍して叩きつけてきたりと、息つく暇もない猛攻を仕掛けてくる。騎士は、これまでの旅で培った回避能力、攻撃パターン、そしてチャームの組み合わせを最大限に活用し、この難敵に挑む。一体ずつ確実に数を減らし、最後の騎士を打ち倒した時、部屋には静寂が戻る。

騎士は、眠るルリエンの前に進み出る。彼はペイル・キングへの絶対的な忠誠心から、自ら夢見の者となることを受け入れたのだろうか。あるいは、都の崩壊を目の当たりにし、せめて封印を守ることだけが己にできる最後の奉仕だと考えたのだろうか。

その仮面の下の表情を知ることはできない。騎士は静かにドリームネイルを振り下ろす。ルリエンの精神は解放され、その体は光の粒子となって消える。同時に、遠く黒卵の神殿の方角から、封印の一つが砕ける重々しい音が響き渡った。ルリエンの監視は、ついに終わりを迎えたのだ。

教師モノモン

二人目の夢見の者は、「教師モノモン」。彼女はハロウネストの偉大な学者であり、知識の探求者だった。彼女が眠るのは、危険な「霧の渓谷」の奥深くにある「教師の書庫」。

霧の渓谷は、視界を遮る濃霧、触れると爆発するクラゲのような生物、そして強力な酸の湖が広がる、探索者を拒むかのような場所だ。騎士は慎重に進み、爆発を避け、酸の湖を飛び越えながら、書庫を目指す。

教師の書庫は、巨大なガラス容器の中に保存されたような姿で存在していた。そして、その入口を守っていたのは、巨大なクラゲのような生物兵器、ウームー。

ウームーは分厚いゼリー状の体で覆われており、直接攻撃をほとんど受けつけないのが厄介だ。その巨体から繰り出される電撃や爆発性の粘液は強力で、騎士は苦戦を強いられる。絶体絶命かと思われたその時、意外な助けが現れる。クィレルだ。

「待たせたね、友よ!この相手は一人では難しいだろう!」

クィレルは、かつてモノモンの弟子であり、師が眠りにつく際に、彼女を守るための仮面であり、ウームーを制御するための鍵を託されていたのだ。彼は師の眠りを妨げるつもりはなかったが、騎士が感染の根源に挑む覚悟を持っていることを知り、協力することを決意した。クィレルがウームーの防御膜を破壊し、隙を作る。その瞬間を狙って騎士が攻撃を叩き込み、ついにウームーを撃破する。

書庫の中、巨大な水槽の中でモノモンは静かに眠っていた。彼女は知識を愛し、おそらくは感染の解決策を探求する中で、自らが封印の一部となる道を選んだのだろう。クィレルの仮面は、モノモンが彼に託した信頼の証だった。

「先生…」

クィレルは、眠る師の前で感慨深げに呟く。彼は騎士に道を譲り、静かに見守る。騎士がドリームネイルでモノモンの封印を解くと、彼女の精神もまた解放される。クィレルは、長年にわたる師を守るという役目を終えた安堵と、一抹の寂しさを感じているようだった。彼は騎士に別れを告げる。

「私は、もうやるべきことを見つけた気がする。ありがとう、友よ。君の旅に幸運があることを祈っている」

そう言って、彼はどこかへと去っていく。彼の最後の目的地は、涙の都の上にある、静かで広大な青い湖だった。そこで彼は、全ての役目を終え、安らかに己の終わりを受け入れることになる。騎士との短い友情は、彼の長い旅の終着点に、ささやかな光を灯したのかもしれない。そしてまた一つ、黒卵の神殿の封印が砕ける音が響いた。

獣者ヘラー

最後の夢見の者は、「獣者ヘラー」。彼女は王国の最も暗く、忌み嫌われた場所、「デ暗闇の巣」の女王であり、そこで眠りについていた。

暗闇の巣は、ハロウネストの地下深く、光も届かぬ場所に広がる広大な巣穴だ。粘つく糸が壁や天井を覆い、無数の蜘蛛や、暗闇に適応した奇怪な生物たちが蠢いている。常に不気味な囁きや、何かが這いずる音が聞こえ、方向感覚を失わせる迷宮のような構造は、訪れる者の精神を蝕む。多くの探検家がこの地で命を落とし、あるいは狂気に囚われたという。

騎士は、鋭い爪を持つ敵や、擬態して待ち伏せるモンスター、そして無数の小さな蜘蛛たちを退けながら、暗闇と恐怖の中を進んでいく。道中、変わり果てた姿の虫たちが、何かに祈りを捧げているかのような不気味な光景も目にする。暗闇の巣の住民たちは、ペイル・キングの光よりも、深淵の闇と、そこに潜む古の存在に近い価値観を持っているのかもしれない。

巣の最深部、「獣の巣」と呼ばれる場所へ向かう途中、騎士は再びホーネットと遭遇する。しかし、今回は敵意を見せず、むしろ道を譲るかのように佇んでいた。

「…来たのね。この先よ、彼女が眠っているのは」

ホーネットの声には、これまでとは違う、複雑な感情が籠っていた。それもそのはず、獣者ヘラーは、ホーネットの実の母親なのだ。ホーネットはペイル・キングとヘラーの間に結ばれた、王国と同盟のための「契約の子」として生まれた。

ヘラーが夢見の者となることを受け入れたのは、娘であるホーネットを守るため、そして暗闇の巣の民を守るためだったのかもしれない。ホーネットは母の犠牲を知りながら、騎士がその封印を解くことを見届けに来たのだ。彼女は騎士の覚悟と、その虚無の力に、王国の未来を託そうとしているのかもしれない。

「行きなさい。そして、この悪夢を終わらせて」

ホーネットに見送られ、騎士は獣の巣の中心へと進む。そこには、巨大な蜘蛛の糸に包まれるようにして、獣者ヘラーが眠っていた。彼女の周りには、忠実な下僕たちが静かに控えている。騎士はドリームネイルを構える。ヘラーの犠牲に敬意を払いながらも、迷うことなくその精神を解放する。三つ目の封印が砕ける音が、暗闇の巣の闇に響き渡った。

三人の夢見の者の解放により、黒卵の神殿への道はついに開かれた。しかし、騎士の旅はまだ終わりではない。夢見の者を追う過程で垣間見えたハロウネストの断片的な歴史、そして騎士自身の出自に関わる謎が、彼をさらに深い場所へと誘っていた。王国の真実、そして感染の根源と対峙する時が近づいていた。

第四章:虚無の胎動と古の女神

壊れた器

夢見の者たちの解放は、黒卵の神殿への道を開くと同時に、騎士自身の過去とハロウネストの根源的な秘密へと繋がる扉をも開いた。騎士は王国のさらに深い層、かつて下水道として機能し、不要なものが打ち捨てられた「古代の穴」へと足を踏み入れる。そこは湿った暗渠であり、ゴミや汚泥が堆積し、異形の生物や、捨てられたことで歪んだ存在が徘徊する陰鬱な場所だった。

この穴の底で、騎士は悲劇的な存在と対峙する。「壊れた器」。その姿は騎士によく似ているが、体はひび割れ、頭部からは感染を示すオレンジ色の光と胞子が漏れ出している。

彼はかつて、騎士と同じく「器」として生み出されながらも、不完全さ故に捨てられた存在だった。感染に完全に蝕まれ、自我を失い、ただ本能的に騎士に襲い掛かる。その動きは苦悶に満ち、時折、助けを求めるかのような仕草さえ見せる。

この戦いは、ペイル・キングが行った非情な計画の犠牲者と自らの出自との対峙であり、自身もまた同じ運命を辿る可能性を示唆する、痛ましいものだった。

騎士は、悲劇的な同胞を打ち破ることでしか、先へ進むことができない。壊れた器を倒した後、騎士はその亡骸の近くで新たな力を手に入れる。これは、より高く、より自由に移動する力を与え、王国のさらなる秘密へと到達するための鍵となる。

アビス

古代の穴のさらに下、ハロウネストの最下層にある最も重要かつ危険な場所、「アビス」。

そこは光が一切届かない、純粋な虚無が渦巻く深淵の世界。生命の対極にある、形なく、思考なく、感情もない、ただ存在するだけの根源的な力。

ペイル・キングはこの虚無の力を恐れ、利用し、そして厳重に封じ込めた。アビスへの入口は固く閉ざされていたが、騎士は王家の紋章である「王の刻印」を見つけ出すことで、その封印を解き、深淵へと降り立つ資格を得る。

アビスの底で騎士が目にした光景は、衝撃的であり、そして彼の存在理由を根底から揺るがすものだった。そこには、見渡す限り、騎士と全く同じ姿をした、無数の「器」たちの白い仮面と黒い体の残骸が、静かな虚無の海に沈んでいたのだ。

…失敗作の山のように。

ラディアンス

太古の昔、ハロウネストの地には、虫たちの精神を束ね、夢を通じて彼らを導く、光と夢の女神「ラディアンス」が存在した。彼女は蛾族をはじめとする古代の虫たちによって崇拝され、彼らは集合的な意識の中で生きていた。

しかしある時、異境から強力な知性を持つ存在、巨大なワームが転生したとされる「ペイル・キング」が現れる。彼はハロウネストの地に自らの王国を築き、虫たちに理性、自我、そして個としての意識を与えた。虫たちはペイル・キングの輝かしい光に惹かれ、次第にラディアンスのことを忘れ去っていった。

忘れられた神、ラディアンスの力は、無視されたことで歪み、怒りと憎しみへと変貌した。彼女は、虫たちが得た「個」の意識、その夢の世界を通じて、彼らの精神に侵入し始めた。これが「感染」の始まりだった。ラディアンスの光は、虫たちの理性を焼き払い、本能的な衝動と、彼女への回帰を求める狂気へと変えていったのだ。

ペイル・キングは、自らがもたらした繁栄が、忘れられた神の怒りによって脅かされていることを知り、王国を守るために恐ろしくも冷徹な計画を実行に移す。それは、ラディアンスの精神への干渉を受け付けない存在、すなわち「虚無」を利用して、彼女を封じ込めるための「器」を創り出すことだった。

王はアビスの深淵に降り立ち、禁断の儀式を行った。自らの血(あるいは光)と、アビスの純粋な虚無を混ぜ合わせ、無数の「器」を誕生させたのだ。

純粋な器

器には絶対的な条件があった。

ラディアンスを完全に封じ込めるためには、いかなる感情も、意思も、心も持ってはならない。完全に「虚無」、空っぽでなければならなかった。

思考や感情の欠片でもあれば、そこからラディアンスは侵入し、封印を内側から破ってしまうからだ。ペイル・キングは生まれた器たちをテストし、少しでも「不純」な要素を見出すと、容赦なく失敗作としてアビスに打ち捨てた。アビスの底に広がる無数の亡骸は、その冷徹な選別の結果だった。

その中で、ただ一体、王の基準を満たしたとされる「純粋な器」が選ばれた。それが、黒卵の神殿に封じられている「ホロウナイト」である。王はホロウナイトの体内にラディアンスを封じ込め、三人の夢見の者の犠牲によって神殿を封印し、王国を救おうとした。

だが、計画は完全ではなかった。ホロウナイトは、純粋ではなかったのだ。それは、父であるペイル・キングに対して抱いた微かな思慕の情だったのか、それとも生まれながらにして持っていた避けられぬ不完全さだったのか。あるいは、ペイル・キング自身が、我が子とも言える器に対して非情になりきれなかった結果なのかもしれない。

その僅かな「心」の亀裂から、ラディアンスの力は漏れ出し、ホロウナイト自身を内側から蝕み、そして封印を弱め、ハロウネスト全体に感染がゆっくりと、しかし確実に広がっていく原因となった。ペイル・キングは自らの計画の失敗を悟り、王宮を封鎖し、姿を消した。残された王国は、緩やかな滅びの道を辿ることになったのだ。

そして、主人公である騎士。彼もまた、アビスで生まれ、失敗作として捨てられた無数の器の一つに過ぎなかった。しかし、他の者たちとは異なり、騎士は何らかの理由でアビスを脱出し、ハロウネストのはるか外の世界へと放浪した。

そして今、まるで運命に導かれるように、感染が蔓延し、封印が限界に達したこのタイミングで、故郷であるハロウネストへと帰還したのだった。彼は、失敗したホロウナイトの代わりとなり、今度こそラディアンスを完全に封じる、あるいは滅ぼすための存在として、再びこの地に呼び寄せられたのかもしれない。

アビスの探索を進める中で、騎士は自身の影、虚無が実体化したかのような存在と対峙する。それは、騎士自身の内なる虚無、あるいはアビスに沈む同胞たちの集合的な意識の表れかもしれなかった。この影との戦いを制し、それを克服することで、騎士は虚無の力をより深く理解し、影のように素早く敵の攻撃をすり抜ける能力を習得する。

さらに、「王の魂」と呼ばれる、ペイル・キングと白の婦人(王妃)の力を合わせたようなチャームを完成させることで、騎士はアビスの最深部にある隠されたエリア、「誕生の地」へと向かえるようになり、そこで騎士は過去の幻影を見る。

ペイル・キングが、まだ純粋だった幼いホロウナイトを連れてアビスを去る場面。そして、その背後には、取り残された無数の器たち。その中に、騎士自身の姿もあった。

この光景は、騎士の出自と、ホロウナイトとの決定的な違いを暗示する。そして、誕生の地の祭壇で、「王の魂」は「虚無の心」へと変化を遂げる。

虚無の心。それは、アビスの虚無の力を完全に受け入れ、騎士自身の存在の本質を根底から変容させる、禁断にして究極の存在だった。これを身に着けた騎士は、もはやペイル・キングによって作られた単なる「器」ではない。

彼は虚無そのものと一体化し、虚無の意志を体現し、あるいは虚無を統べる可能性を秘めた、新たな次元の存在へと変貌する。このチャームは、物語の結末を大きく左右する重要な鍵となる。

自らの出自の秘密を知り、虚無の力をその身に宿した騎士は、ついにハロウネストの運命を決する最後の戦いへと向かう。目的地は、忘れられた交叉路の中心に聳え立つ、黒卵の神殿。

第五章:兄妹の対峙と運命の岐路

黒卵の神殿

三人の夢見の者の封印は解かれ、アビスの深淵で自らの起源と虚無の力に触れた騎士は、ついに最終目的地へと歩を進める。忘れられた交叉路の中心部、かつては王国の信仰の中心であったかもしれない場所に、巨大な黒い卵のような建造物、「黒卵の神殿」が静かに鎮座していた。

その表面には、夢見の者たちの仮面が刻まれた封印が施されていたが、今やそれらは砕け散り、神殿への道は開かれている。

神殿の入口の前には、見慣れた赤い影が待っていた。ホーネットである。彼女は槍を地に突き立て、静かに騎士の到着を見守っていた。その表情は硬く、瞳には複雑な感情が揺らめいている。悲しみ、決意、そしてわずかな期待。

「…中に入るというのね。たとえ、その先に待つのがどんな運命だとしても。中にいるのは、私たちの兄妹。ペイル・キングが生み出した、最初の『器』」

ホーネットは、神殿の中にいるホロウナイトが、自分たちと同じくペイル・キングによって生み出された存在であり、ある意味では兄妹にあたることを改めて口にする。

彼女は、これから起ころうとしている同胞同士の戦い、そしてそのどちらかが犠牲になるであろう未来――を予感し、深い悲しみを覚えていた。しかし、彼女は騎士を止めることはしない。ハロウネストを覆う悪夢を終わらせるためには、この道しかないことを理解しているからだ。

「行きなさい。そして、どうか…この王国の苦しみを終わらせて」

彼女は騎士に道を譲る。その背中には、守護者としての責任と、家族としての情、そして王国の未来への憂いが重くのしかかっているようだった。

騎士は、ホーネットの思いを受け止め、黒卵の神殿の内部へと足を踏み入れる。神殿の中は広く、がらんとしており、不気味なほどの静寂に包まれていた。

中央には祭壇のような場所があり、そこには巨大な鎖によって厳重に縛り付けられた、騎士と同じような仮面を持つ存在がいた。それが、ホロウナイト。かつて「純粋な器」として選ばれ、ラディアンスをその身に封じ込めた英雄。しかし…

今の彼の姿は、英雄とは程遠いものだった。

ホロウナイト

体はやつれ、鎧はひび割れ、その隙間からは禍々しいオレンジ色の感染の光が脈打つように漏れ出ている。仮面には亀裂が走り、瞳は虚ろだが、その奥には長年にわたる苦痛と、内なる光との絶え間ない戦いの跡が刻まれていた。騎士が近づくと、ホロウナイトを縛り付けていた鎖が、まるで彼の苦悶に呼応するかのように、大きな音を立てて砕け散る。

解放されたホロウナイトは、ゆっくりと立ち上がる。その動きはぎこちなく、まるで操り人形のようだ。彼はもはや、自身の意思で動いているのではない。

体内に封じ込めたラディアンスの力、その感染によって完全に支配され、目の前に現れた新たな「器」である騎士を、本能的に排除しようとしているのだ。彼は釘を抜き放ち、騎士に向かって咆哮する。それは戦いの雄叫びというよりは、終わらない苦しみからの解放を求める悲鳴のようにも聞こえた。

最後の戦いが始まる。騎士とホロウナイト、虚無から生まれ、同じ宿命を背負わされた二つの器の対決。

戦いは激しさを増し、神殿の壁に釘と衝撃の音が響き渡る。騎士がホロウナイトにダメージを与えていくと、彼の動きはさらに不安定になり、苦悶の声は大きくなる。そして、ついにホロウナイトは膝をつき、動きを止める。しかし、それは終わりではなかった。彼の体内から、抑えきれなくなったラディアンスの光が、さらに強く溢れ出そうとしていた。

第六章:夢の果てに

ホロウナイトが弱り、内なるラディアンスが暴れ出し、彼を完全に飲み込もうとしたその瞬間、黒卵の神殿にホーネットが駆けつける。

「今よ!奴の精神に、夢の中に入るのよ!感染の根源を断つの!」

ホーネットは糸を放ち、苦しむホロウナイトの動きを一瞬だけ拘束する。騎士はその隙を見逃さず、覚醒した夢見の釘をホロウナイトの仮面に突き立てる。

瞬間、騎士の意識は現実世界から引き剥がされ、ホロウナイトの精神世界、そしてそのさらに奥深く、感染の根源であるラディアンスが潜む「夢の世界」へと飛ばされる。

そこは、光り輝く白い足場が連なる、現実離れした空間。空には巨大な太陽のような光球が浮かび、その中心に、ハロウネストを狂気と崩壊に導いた元凶、忘れられた光の神、ラディアンスがその真の姿を現す。巨大な、神々しい、しかしどこか歪んだ蛾のような姿。彼女こそが、ペイル・キングに忘れ去られ、怒りと憎しみによって歪んだ古の神だった。

「…何故だ?…何故、私の光を拒む…?」

ラディアンスは、虚無の器である騎士の存在を認識し、最後の抵抗者に対して、その神威のすべてをぶつけてくる。強烈な光線、天から降り注ぐ光の剣、意志を持つ光球、そして精神そのものを焼き切ろうとする純粋な光の嵐。

ハロウネストの支配権を巡る、光と虚無、記憶と忘却、二つの対立する根源的な力の最終決戦だった。

戦いは熾烈を極め、光と闇が激しく衝突する。しかし、騎士がラディアンスを追い詰めた時、奇跡が起こる。現実世界で倒れていた最初の器であるホロウナイトの影、その内に残っていた最後の抵抗力、あるいは彼自身の虚無の本質が、ラディアンスに一瞬の隙を作る。まるで弟である騎士を助けるかのように。

その瞬間を待っていたかのように、騎士の体から、そしてハロウネストに広がるアビスの闇から、無数の黒い影、かつてアビスに捨てられた全ての器たちの意識、あるいは虚無そのものの力が、奔流となって溢れ出す。

それらは一つに集結し、巨大な、不定形の、全てを飲み込む「虚無の存在」へと変貌する。

虚無の巨人は、神々しいラディアンスをその無数の触手で捕らえ、締め上げる。ラディアンスは最後の抵抗として強烈な光を放つが、虚無はその光さえも飲み込み、軋むような音を立ててラディアンスの体を砕き、その存在を完全に消滅させる。

光が消え、悪夢は終わった。

ラディアンスが滅びたことで、ハロウネストを覆っていた感染の呪いは解け、捕らわれていた虫たちの精神は解放される。狂気は去り、静寂が訪れる。黒卵の神殿は、その役目を終えたかのように崩壊を始める。瓦礫の中で、ホーネットは一人、呆然と立ち尽くす。彼女は勝利を目撃したが、そこに騎士の姿はなかった。

騎士は、ラディアンスを滅ぼすと同時に、自らの本質である虚無へと完全に還っていったのだ。彼はハロウネストを真に解放するという目的を達成し、その代償として、あるいは必然として、個としての存在を失った。

王国に平和は訪れたが、その平和をもたらした英雄は、誰に知られることもなく、虚無の深淵へと消え去った。これは、完全なる犠牲と、虚無による救済の結末である。ハロウネストの未来は、ホーネットをはじめとする残された者たちの手に委ねられる。

終章:語り継がれるべき物語

ハロウネストを覆っていた感染の悪夢は、終わりを告げた。

しかし、物語の中心にいた名もなき騎士は、ハロウネストの歴史から消すことになる。彼はペイル・キングの計画が生んだ道具であり、虚無の器であり、そして最終的にはハロウネストの運命を大きく変えるための触媒だった。彼の仮面の下に感情があったのか、彼が何を思い旅を続けたのか、その答えは誰にも分からない。

騎士の旅路で出会った多くの虫たち、王国の悲劇を背負う王女ホーネット、知的好奇心と共に友となったクィレル、ダートマウスで静かに待つ老いたムシ、陽気な地図製作者コーニファーとその妻イゼルダ、最後の蛾族である先見者、誇り高きカマキリの王たち、そして数えきれないほどの、名もなき敵や友好的な住民は、それぞれに新たな時を迎える。

ある者は解放された王国で新たな生活を始め、ある者は失われたものを悼み、ある者は騎士が残した謎や、新たに出現した虚無の意味を問い続けるだろう。ホーネットは、おそらく残された王国の守護者として、あるいは新たな脅威への監視者として、その針を構え続けるのかもしれない。

崩壊し、静寂に包まれた地下王国ハロウネスト。風が吹き抜け、水滴が落ちる音だけが響く。しかし、この静寂は、決して空虚なものではない。

そこには、確かに紡がれた物語がある。忘れられた神の怒りと悲しみ、王国を救おうとした王の壮大で非情な計画、その犠牲となった無数の命、そして、虚無という虚ろな存在でありながら、計り知れない困難に立ち向かい、運命を切り開いた小さな騎士の、壮大な叙事詩が刻まれている。

ハロウネストの静寂は、多くの涙と犠牲の上に成り立っている。そして、その静寂の中に、光と闇、夢と虚無、理性と本能、誕生と滅亡が複雑に織りなした、深く、もの悲しく、そして美しい物語の残響が、いつまでも、いつまでも微かに響き続けている。

騎士がどの結末を選んだとしても、ハロウネストで繰り広げられたこの物語は、それを体験した者の心の中に深く刻み込まれ、尽きることのない問いと、豊かな解釈、そして忘れがたい感動を与え続けるだろう。

虚無の騎士が見た夢の果てを、私たちは想像し続けるのだ。

【その他の結末】

ホロウナイトEND

※虚無の心なしでホロウナイトに挑む

もし騎士が「虚無の心」を身に着けていない場合、戦いは一つの悲劇的な結末を迎える。

弱り果てたホロウナイトが崩れ落ちると、騎士はその前に静かに歩み寄る。そして、まるで定められた役割を引き継ぐかのように、ホロウナイトの体内に渦巻いていた感染の光――ラディアンスの本質の一部――を、自らの虚無の体へと吸収し始める。オレンジ色の光が騎士の仮面と体を包み込み、黒い虚無の触手が現れて騎士自身を繭のように覆っていく。

彼は、兄であるホロウナイトに代わる、新たな「器」となったのだ。

再び黒卵の封印が閉じられ、神殿は静寂を取り戻す。外では、ホーネットが固く閉ざされた神殿の扉を、悲しげに見つめている。一つの犠牲が終わり、また新たな、しかし根本的には何も解決していない犠牲が始まった。

ハロウネストは一時的に感染の拡大から救われたかもしれない。しかし、感染の根源であるラディアンスは依然として器の中に存在し、いずれ騎士もまたホロウナイトと同じように内側から蝕まれ、封印は再び弱まるだろう。これは、終わることのない悲劇の繰り返し。自己犠牲という名の仮初の終焉に過ぎない。

ハロウネストに真の解放は訪れず、物語は円環を繰り返す。

封印された血族END

※虚無の心あり&ホロウナイトを倒す

…騎士が新たな器となり、封印が閉じられようとするまさにその瞬間、ホーネットが神殿の中に飛び込んでくる。

彼女は、ただ一人で犠牲となる騎士を見過ごすことができなかったのか、あるいは封印をより強固なものにするためか、自らも封印の一部となることを選ぶ。黒い虚無の触手が二人を包み込み、神殿の扉には、夢見の者たちに加え、ホーネットの仮面もまた刻まれる。

兄妹が共に永遠の眠りにつくことで封印は強化されるが、それはホーネット自身の犠牲の上に成り立つ、さらに痛ましく、救いのない結末である。

虚無との抱擁END

※神の家を踏破

ハロウネストの辺境、ゴミ捨て場の奥深くに隠された「神の家」。そこは、「神を求む者」と呼ばれる、より高次の存在、あるいは神々の力を探求する者たちが集う異空間だった。

騎士はこの場所で、ハロウネストで遭遇したボスたちや、さらに強化された神話的な存在との連続戦闘「神々の神殿」に挑むことになる。それは、騎士自身の限界を超え、神々の領域に足を踏み入れるための、究極の試練だった。

幾多の死闘を乗り越え、騎士が五つの神殿すべてを制覇し、その頂点、「ハロウネストの神殿」の最奥に到達した時、彼を待ち受けていたのは、通常のラディアンスをも遥かに凌駕する存在、

「絶対的なるラディアンス」だった。

それは光の神性の極致であり、神々の中の神とも呼べる圧倒的な力を持つ存在。戦いは想像を絶する次元で、より速く、より強力な光の攻撃を、より苛烈なパターンで繰り出してくる。騎士は、これまでの旅で得た全ての力、技、チャーム、そして技術と集中力のすべてを注ぎ込み、この究極の神性に挑む。それは、虚無の器が、神そのものを超克しようとする、壮絶な戦いだった。

そして、ついに騎士が絶対的なるラディアンスを打ち破った瞬間、予想外の事態が発生する。神々の家全体を覆っていた巨大な繭のような存在、騎士をこの試練へと導いた「神を求む者」が、苦悶の声を上げ始める。騎士の勝利が、彼女の存在そのものを揺るがしたのだ。

次の瞬間、騎士の中から、アビスで一体化した虚無の力が抑えきれない奔流となって溢れ出す。それはもはや、騎士個人の力ではない。アビスに眠る全ての虚無、全ての失敗作たちの怨念、あるいは虚無という概念そのものが、一つの意志を持ったかのように顕現したのだ。

巨大な虚無の存在は、まず絶対的なるラディアンスの光を完全に飲み込み、消滅させる。そしてその矛先は、神の家そのもの、そして苦しむ神を求む者へと向けられる。黒い触手が神を求む者を内側から貫き、引き裂き、破壊する。神々の家は虚無に飲み込まれ、崩壊していく。

だが、虚無の侵食は異空間だけに留まらなかった。現実世界のダートマウス上空に、巨大な虚無の存在が姿を現す。空からは黒い虚無の雨が降り注ぎ、大地には神を求む者の体の一部であったと思われる巨大な残骸が落下する。村の住人たちは、この異様な光景をただ見上げることしかできない。

そして、黒卵の神殿では何かの違和感を感じ取ったホーネットが立っていた。彼女は武器を構え、新たに出現した存在を強い警戒心と共に睨みつけている。

この結末は単なるハロウネストの解放ではなく、自らが新たな「虚無の神」として君臨した可能性を示唆している。それは救済か、それとも新たな支配の始まりか。ハロウネストの、そして世界の未来は、計り知れない力を持つ虚無の手に委ねられ、物語は不穏で力強く、そして開かれた形で幕を閉じる。

神々の時代は終わり、虚無の時代が始まるのかもしれない。

おわりに

この小説は、その大半が生成AI(Google AI Studio|Gemini 2.5 Pro)によって書かれたものです。

年内にシルクソングの発売を控え、私自身が前作の物語の全容を確認したかったので、全文をAIに書いてもらったものを、私が目視して一部に加筆修正を加えています。

とはいえ、主人公が放浪者でなく「騎士」になっていたり、汚染が「感染」に、蒼白の王が「ペイル・キング」となっているところは、そのままでも読めるため直していませんし、

急にプレイヤーを相手取ったメタ発言が入ったり、戦闘など、あまりに稚拙な描写があったりした箇所は大幅にカットしたものの、

●プロンプト
世界中のネタバレ投稿を探して、ホロウナイトのストーリーを物語調で書いて。

登場するキャラクターの人物像や背景などの紹介を交えて、キャラクターや地名などの固有名詞は日本語版で統一して欲しい。目標は3万文字前後にして欲しいけど。少なくとも2万文字以上になるように書いて。

この、たった134文字のプロンプトから生成される文章としては十分すぎるクオリティだなと感じました。

最初から「夢の果てにENDのストーリーで書いてね」と言っておけば、途中の虚無の心あたりの説明がもう少しスムーズになったかな?というのは反省点ですね。

これからもストーリー概要は生成AIに作ってもらおうかな。


ところで、2025年3月に博報堂が発行した雑誌、「広告」に、芥川賞作家の九段理江さんが掲載した「影の雨」という短編小説をご存じでしょうか?

この小説は、その95%を生成AIが作った小説だそうです。そして、実は本投稿も割合的には95%くらいが生成AIによる作文です。

というか、むしろこの「影の雨」の話を知って、それに合わせてそのくらいの割合で書いてみたのですが、後から調べたら本家は6:4で九段さんの割合が高いようです。ナンテコッタ

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この記事を書いた人

ホロウナイトが好きです!!!

ピーク時はゲームが好きだというお客さん皆に勧めるくらいにはハマっていましたね笑 そんなホロウナイトの新作が2025年に出ると分かり、このサイトを立ち上げました。2022年の悪夢はもう繰り返さないはず!!!

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